カボチャの馬車は、途中下車不可!?
ダメだ。
私がこんなに意識してたら、彼だってきっと困っちゃう。
私とのことは、ただの『仕事』だったんだから……
「も、もうっカレントウェブの人なら、そう言っておいてくれればよかったのに。初対面のフリするの大変だったんだから」
「初対面のフリ? なんで? そんなことしなくてよかったのに」
首を傾げながら言われてしまい——私はパチパチ、瞬きした。
え? しなくてよかったの? だって……
「だってライアン、私のこと見ても何も言わないから、てっきりそうしたいのかと……」
彼にも自覚はあったらしい。
「あ……あぁ、それは」と、気まずそうに目をそらした。
「まさか今日飛鳥に会えると思ってなかったから、ちょっと……どうしようかと考えてて」
どうしようか……?
って、困ってた?
そんなに、会いたくなかったってこと?
「会社のことは……ごめん。言おうと思ってたんだけど。でも——」
「大丈夫。理由はわかってるから。リーって名前、知られたくなかったんでしょう? だから、前に社長に紹介してって頼んだ時も、はぐらかしたのよね?」
ヒリリと痛む傷口から目をそらしながら、こっちは必死で明るく言ってるのに。
「え? あ、……そうか。それもあるね」
返ってきたのは、歯切れの悪い言葉だけ。
何よ……その、『それ「も」』、って……?
まるで、ついでみたいな、オマケ、みたいな……。
違和感を聞きとがめた私の、探るような視線に気づいたらしい彼は、落ち着かない様子で足元へ目を落とした。
「……さっき一緒にいた奴、どう思った?」