カボチャの馬車は、途中下車不可!?

何それ? 
あっけにとられて見上げると。
そこにあったのは、晴れ渡った海原のような、清々しい笑みだった。

「SDの幹部と本社の重役連中にね、宣言してきたんだ。今後一切協力はできないし、リーとは離れて生きていくって。根回しやらフォローやら、まぁいろいろ時間がかかって……実は昨夜、ようやく東京に戻ってきたところなんだけど」

「で……でも、それ……大丈夫、なの?」

本社入り、決まってたんじゃないの?
創業ファミリーの分家筋、とか言ってたし……そんな簡単に、さよならってできるものなの?

私の気持ちを読み取ったのか、ライアンはくすっと笑いながら続けた。

「僕はね、adopted child……つまり、養子なんだよ。10歳の時、今の両親のところへ引き取られてね。だから、本家とのつながりなんて、実はないも同然なんだ」

養子……そうか、サラブレッドじゃない御曹司っていうのは、そういうことなのか。

「まぁ二度とリーの後ろ盾は期待できないし、取引先をいくつか失う覚悟はしてるけどね」
うちの社長殿も了承済みだし。
それもおもしろいんじゃないかな、なんて、その美貌に不敵な笑みが閃いた。

「リーの名前に頼らず、自分の力だけでどこまで行けるか……やってみたくなったんだ。僕の中にこんな……野望って名前をつけたいような欲があったなんて、知らなかったよ」

広げた大きな片手を、黒い天へと差し伸べながら言う。

「飛鳥の、おかげだ」
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