カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「え? わ、私?」
声、裏返っちゃった。
だって私、何にもしてないけど……
「飛鳥、僕に言っただろう? 『自分が納得できないやり方でやって仕事をとっても全然うれしくない、とにかくひたすら全力でやってみる』って。そしてとうとう、一人で最後までやり遂げた」
あ……、オオタフーズのトラブルの時か。
思い出して頷くと。
「あの時思ったんだ。そんな風に必死に、全力で何かに向き合ったことが、僕にはあるだろうか、って」
瞳の色が一瞬、翳ったような気がした。
「昔からそこそこ器用だったからね、勉強も仕事も、苦労したことはなかった。困らない程度に金や時間があって、楽しく面白く過ごせれば、それでいいと思ってた」
ライアンは自嘲気味に唇を歪め、下ろした手をゆっくり、強く握り締めていく。
「『ひたむき』って、素敵な日本語だよね。飛鳥に出会った時、その言葉を思い出したよ。君はいつも真っすぐで、ひたむきで……初めて僕は、自分が鳥かごの中の鳥になっていたことに、気づいたんだ」
「鳥かごの、中の……鳥?」
「そう。囲われ、餌を与えられ……安全と引き換えに、自由を奪われた鳥。空の高さも青さも、忘れてしまった鳥——。飛鳥はね、僕に新しい翼をくれたんだ。鳥かごから飛び出すためのね」
今。
彼の瞳は、迷いのカケラもなく明るく輝いていた。
目を奪われるほど、濁りのない澄んだ色で。