カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「おかえりなさいませ」
下船した私たちは、黒い背広姿の運転手に恭しく迎えられ、また同じ車に乗り込んだ。
後部座席に並んで座りながら、そっと隣を伺う。
あのやりとりから、彼はずっと黙り込んだままだ。
さすがに気を悪くした……わよね。
なんとなく罪悪感に駆られて、膝の上でキュッと両手を握り締めていると。
そこへ、するりと大きな手が重なった。
「っ……ライ——」
「最後だから、これくらい許してくれてもいいだろ」
拗ねたような視線を外へ向けたまま言う。
最後……
その言葉に、ズキリと胸に痛みが走って。
慌てて反対側の窓へ、目をやった。
彼に預けた手、そこから伝わる体温を、存在を、必死に意識の外へ押しやって。
移っていく都会の夜を、ひたすら見つめ続ける。
けれど。
自分が外の風景なんか何も見ていなかったことに気づかされるのは、それからすぐのことだった。