カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「着いたよ」
少しの揺れもなく、車が停まって。
その時やっと、私は行先を告げてなかったことに気づいた。
どこか、大きな駅にでも送ってくれたのかな。
そしたらタクシーで……
そんなことを思いながら、何気なく窓の外を見て——目を見開いた。
だって、車は数時間前に発ったばかりのシェルリーズホテルに、その正面玄関前に、停まっていたから。
「ライアン、これってどういう……」
「ここまでこっちのこと本気にしといて、まさか今更、僕が君をおとなしく帰すとか、思ってた?」
シートにもたれながら私を見つめる瞳には、ほの暗い欲情の色が溶けている。
「な、……でも、私……っ」
やっぱり最初から、そのつもりだったんだっ……
天使のような笑顔に絆されて油断した自分を後悔しながら、忙しない呼吸を繰り返す。
こんな男の言いなりになんて、なるべきじゃない。
帰るべきだ、今すぐ。
理性はそう叫んでいるのに。
どうして、動けないんだろう?
何を迷ってるんだろう、私は。