カボチャの馬車は、途中下車不可!?

おもむろに。

口ごもり戸惑う私を見つめていたライアンが、艶やかに微笑んだ。
「言い訳をあげるよ」

「い、いいわけ?」

「君のスーツとかばんが、僕の部屋に運ばせてある。取りにおいで」

「スーツと……かばん」

「そう。君のものだよ?」

私の襟足に落ちたおくれ毛を、彼の指が弄び。
ぞくりと、やるせない衝動が鳩尾の奥から沸き起こった。

「取りに来なくちゃね……?」


美貌の悪魔が、魅了する。
楽しいゲームをしようと。
甘く誘う——

カチャリとドアがあいて。
顔を上げると、ベルボーイが腰をかがめていて。
「おかえりなさいませ」

「っ……——」

見えない何かに操られるように、私はふらふらと、車から降りた。
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