新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「至らないところがあれば、遠慮なくビシバシご指導ください。根性だけは、あるつもりですから!」
今朝、湊にも宣言したことと同じ言葉を口にして、両手でガッツポーズを作ってみせた。
すると近衛さんはそっと目を細め、不意に小さく息を吐く。
「……なるほど。社長が手段を選ばず手に入れようとしたのも頷けます」
「え……?」
「打ち合わせを終えて、結婚することになったと言われたときには、さすがに驚きましたが……。そうまでして手に入れたい相手であったと思えば、当然の結果なのかもしれませんね」
言い終えてから相好を崩した近衛さんの言葉に目を見張った。
慈愛に満ちた、穏やかな笑顔だった。
反射的にドクリと胸が鳴ったのは、彼の笑顔につい見惚れてしまったのと、たった今言われた言葉に驚いたからだ。
「おい、俺の目の前で堂々と俺の妻を口説くなよ」
「失礼しました。思ったことをついそのまま口にしてしまいましたが、奥様の可愛らしい顔が見られたので満足です」
そう言って、緩やかに口角を上げた近衛さんは長い睫毛を伏せて静かに笑う。
その仕草のひとつ一つがとても綺麗で……。
なんだか、このふたりと同じ空間に居続けたら、心臓がいくつあっても足りない気がする。