新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「ごめんね、おばあちゃんの言うとおりだった。帰って、ご飯の支度しなきゃ──」
そのとき、慌てて立ち上がろうとした私の鞄の中で、携帯電話が震えた。
取り出して確認してみると、案の定、湊からのメッセージが一件。
【病院まで迎えに行こうか?】とのことだった。
湊には会社を出る前に、おばあちゃんのところへ寄ると連絡を入れた。
だからこそ迎えに来ようかと言ってくれたのだろうけれど、まさかそんな手間までかけられない。
「おばあちゃん、それじゃあまた明日ね! あ……実は月末の金曜日に、企画部のみんなが私の歓迎会をやろうって言ってくれてるんだけど……」
「もちろん、いってらっしゃい。せっかくのご厚意を、無下にしたらダメよ」
「……うん。ありがとう、おばあちゃん。歓迎会の次の日は休みだし、朝から顔を出すようにするから。おばあちゃんも、無理せずゆっくり休んでね」
言いながら鞄を肩にかけ、病室を出た。
急ぎ足で帰路につきながら、必死に頭の中で冷蔵庫の中身を思い浮かべた。
昨日の病院帰りに、食品はいくつか買っておいたのだ。
野菜も、玉ねぎ、人参、じゃがいも、小松菜にレタス、キャベツ、トマト……。
お肉とお魚も、買って冷凍しておいた。
……そうだ、何を作るかの前に、湊に何時に帰ってくるか聞かないと。
それによって料理に使える時間も変わってくるし、できるかどうかはわからないけれど、湊の食べたいものを用意したい。
【先ほど病院を出て、帰っているところです。湊は何時に帰宅予定ですか?】
ほんの少しだけ立ち止まりメッセージを送ると、再び家路を急いだ。
新居であるマンションは、駅構内を通って出た南口から徒歩五分。
北口にある病院からは、ドア・ツー・ドアで約十五分ほど。
けれど、その間に湊からの返信がくることはなかった。
もしかして、今日も遅くなるのだろうか──と考えながらマンションのエントランスまで来た私は、エレベーターに乗り込みボタンを押した。
仮にすぐに帰ってくるなら、先にお風呂に入ってもらっている間に夕飯作りをさせてもらおう。
考えれば考えるほど、初出勤に浮かれて妻の仕事をおざなりにしてしまった自分に呆れてしまう。