新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
……おばあちゃんの言うとおり、もっとちゃんとしなきゃ。
妻としての役目も果たせずに、湊の優しさに甘えて助けてもらってばかりでは、私はただの重荷に過ぎない。
「あれ……?」
けれどエレベーターを降り、家の前まで来て玄関を開け、中に入って驚いた。
リビングの灯りがついているのだ。
今朝、湊と一緒に家を出たときには消したことを確認したはずなのに、どうして……。
「え……」
「おかえり」
靴を脱ぎ、急いで部屋の扉を開けた私は二度驚いた。
視線の先にはスーツ姿の湊がいて、手には何故か調理器具のお玉を握っている。
「た、ただいま……」
数秒固まってから、返事をした。
スーツ姿……とは言ってもジャケットを脱ぎ、腕まくりをした白シャツに、下はスーツのスラックスのままという出で立ちだ。
何より湊とお玉は、不似合いにも程があった。
「初出勤の報告で、秋乃さんと話したいこともたくさんあっただろ? せっかくなら、面会時間ギリギリまでいても良かったのに」
「そしたら、それに合わせて迎えに行ったし──」なんて続けた湊の背後にあるキッチンでは、食欲をそそる湯気が揺れていた。
匂いからして、カレーだろう。
でもまさか──どうして?