新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「今日はお食事をしながら、ゆっくりと花宮さんのお話を聞かせていただければと思っています。ですが具体的な仕事の話は、食事のあとにでもしましょう。花宮さんは、アルコールは大丈夫ですか?」
優雅な手つきでメニューを差し出す如月さんの言葉を、私は混乱する頭の中で必死に噛み砕いた。
そう、そうだ。
私は今日、雲の上の人であるはずの彼と、仕事の話をするためにここに来ている。
如月さんと、食事をしに来たわけではないのだ。
そもそも、今日ここに来るのはメールをくれた近衛さんご本人だと思っていたのに……。
ああ、だめ。
今のこの状況で、落ち着けと言うほうが無理がある。
「もし迷われているようなら、こちらの飲み口の軽いワインあたりはどうでしょう」
そんな私の思いを知ってか知らずか、彼は穏やかな笑みを絶やさない。
仮に今、促されるままディナーを食べ始めても、せっかくの料理の味もわからないまま、食べ終えてしまうだろう。
……それはすごく、勿体無い。
美味しいご飯は美味しく戴いてこそ、礼儀というものだ。
そもそもこんなところで食事をするなんて、最初で最後の贅沢になるかもしれない。
「……如月さん、申し訳ありません」
そんなことを考えながら、私は首元のネックレスに触れ一度だけ小さく息を吐くと、ゆっくりと顔を上げた。