新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない


「まだ間に合う。だから、行こう」


けれど、続けてそう言った湊は私の腕を強く引いた。

そうして驚いた表情で固まる根岸さんの前まで行くと、迷いのない声を響かせる。


「次の俺の取材は夜だったな。それまで、俺と桜は家族の用事で抜けるが必ず時間までには戻る」

「え……え、わかりましたけど、あの、なんで花宮が……」

「桜の祖母の容態が、今朝方急変した。だから俺は夫として連れ立って、今から病院へ向かう」


──夫として。

ハッキリと、それだけを言った湊は、今度は近衛さんを呼びつけた。

そうしてこのあとのスケジュールの調整や仕事のことを短く言い添えると、今度は私の手を握った。


「行こう」


引かれた手は強引なのに、優しい。

後ろを振り向けば根岸さんとサツマちゃんが相変わらず驚いた表情でコチラを見ていて胸が痛んだ。

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