新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「花宮さんが今お勤めの系列企業からLunaに来てくださるというのなら、スムーズに話が進むように僕の方でも尽力させていただきます」
顎の下で長い指を組み、相好を崩すことなく話を続ける如月さんを前に、私は再び脱力した。
系列企業からの転職って、そんなに簡単なものなのかな?
所謂、引き抜きという扱いになるのだろうか。
本来ならば簡単な話ではない気もするけれど、彼が言うと容易なことのように聞こえるから不思議だ。
「どうでしょうか?」
再び穏やかかつ、まっすぐに尋ねられ、私は膝の上で握った拳に力を込めた。
──過程はどうあれ、きっと、誰が聞いても良い話だ。
ジュエリー業界の中でも一目を置かれているLunaで働ける。
数年前……ひたすらにジュエリーデザイナーを夢見ていた私だったら、泣いて喜ぶ出来事だろう。
……だけど。今の私は、この話を受けるわけにはいかない。
大切な家族との時間を守るために。
大好きなおばあちゃんとの日々を守るためにも、私は彼からの提案を受けるわけにはいかないのだ。