新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
 


「……申し訳ありません。とても素敵なお話なのですが、お受けするわけにはいきません」


そう言って、座ったまま頭を下げると、如月さんの顔から笑顔が消えた。


「如月さんは何か勘違いをされているのかもしれませんが、私が運営しているCOSMOSは会社ですらない、ただの趣味が講じて始めたネットショップです。……私も、今以上の何かを望んでいるわけではないですし、何か特別な想いを抱いてアクセサリーを作っているわけではありません」


言い終えた途端、鼻の奥がツンと痛んだ。

膝の上で握りしめた手も震えている。

けれど私は溢れそうになる感情に精一杯蓋をして、淡々と言葉を続けた。


「あくまで自分の承認欲求を満たすために始めたもので、お客様のためにだとか考えたこともありませんでした。だから如月さんの……Lunaのお力には、とてもなれそうはありません。私には荷が重すぎます。でも、今日こうしてお話をいただけたこと、本当に光栄で──」


──光栄でした。

そう告げれば、この話は終わりになると思っていた。

終わりになるはずだったのに……。


「──お言葉ですが、ただの趣味では終われなかったからこそ、ネットショップを開いてお客様に商品を届けているんですよね?」

「……っ」

「それとも花宮さんは本当に、ただの趣味の延長線上で、アクセサリー作りをしているのですか? 本当に、何も特別な想いはないのですか?」


突然、如月さんの迷いのない声が私の曖昧な言葉を切った。

棘のある物言いに、思わずテーブルに落としていた視線を上げる。

 
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