新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
 


「私が今、こうしていられるのは……他でもない、祖母のお陰なんです」


ぽつりと溢した言葉は自分でもわかるくらいに震えていた。

続けて思い出すのは、卒業を控えた三ヶ月前。

おばあちゃんが突然、自宅で倒れたときのことだ。

以前から身体の異変を感じていたらしいおばあちゃんは私に心配をかけまいと、具合が悪いことを隠していたらしい。

救急車で運ばれた病院で告げられたのは、おばあちゃんの脳血管に疾患があるということ。

お医者さんから『あと少し来るのが遅かったら危なかった』と言われたときには、生きた心地がしなかった。


『以前から、お祖母様が身体の具合が悪そうにしていたことはありませんでしたか?』


お医者さんにそう聞かれて、思わずドキリとした。

思い返せばおばあちゃんに頭痛や目眩があるということを、私は少なからず察知していたのに「大丈夫だろう」と高を括っていたんだ。

……ううん。

卒業制作と課題の忙しさに追われて、きちんとおばあちゃんの様子に目を向けられていなかった。

結局、おばあちゃんはその日から入退院を繰り返すようになり、今は約三週間前から病院のベッドの上で、日々を過ごしている。

年齢のせいもあり、容態も一進一退を繰り返し続けていて、今では手術も難しい状態だ。

 
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