新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
 


「先ほど如月さんが仰ったとおり、私は今、With Weddingの系列企業……祖母がお世話になっている病院の近くの企業に務めながら、ひとりで祖母の面倒を見ています」


『桜ちゃんに迷惑をかけて、本当にごめんなさい』

おばあちゃんが倒れた日の翌日。

私は誘いを受けていたデザイン関連の会社を自主的に辞退した。

そして、病院近辺にある今の会社を含めた一般企業を、手当り次第受け続けた。

おばあちゃんが継続して治療を受けるにはそれなりの費用がかかる。

その費用や病院に通う時間を、私はどうにかして確保する必要があったのだ。

だけど私が希望していたデザイン関連の会社は、残業も当たり前な上に、新入社員は雀の涙ほどのお給料しかもらえない。

ボーナスなんて、夢のまた夢。

クリエイター関連の会社ではあまり珍しくはないけれど、有給制度もあやふやで、休日出勤も稀にあり、福利厚生も充実しているとは言えなかった。


『おばあちゃんは謝る必要なんてない。今度は私がおばあちゃんを守るから、おばあちゃんは安心して身体を治すことだけを考えて』


今の会社は、おばあちゃんのケアをしやすいようにと選んだ会社だ。

──桜は、おばあちゃんのために夢を諦めた。

きっと、私を知る誰もがそう思うはずだろう。

だけど今、私はあのときの選択を後悔していない。

だって私は、大好きなおばあちゃんのそばにいられる方法を選んだだけだから。

今度は私がおばあちゃんを支えたい、守るって決めたんだ。

そのためなら夢も希望も、そんなもの全部、無くなっても構わない。

おばあちゃんが笑っていてくれるなら、それだけで十分だ。

だから今ここにある全てが、私の【最善】だと言い切れる。

 
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