新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「私自身、デザイン学校でジュエリーのデザインを三年間勉強したこともありました。もちろん、当時は……ジュエリーデザイナーになるという夢も抱いていました。でも今は、祖母の面倒を見ることが、私のしたいことなんです」
おばあちゃんに対して、面倒を見ているなんて言い方はしたくなかった。
だけど今、如月さんに事情説明をするには、これが一番わかりやすい表現だろう。
「祖母は、私の唯一の家族であり、大切な人なので。私は最後の最後まで……祖母のそばにいたいんです」
そこまで言い終えると、堪えきれなかった涙が頬をつたって零れ落ちた。
誤魔化すように視線を落とせば、真っ白なナプキンに小さなシミを作っていた。
「仮にもし、Lunaに勤めることになったら、本社のある自由が丘勤務になりますよね。そうなると、今住んでいるところからは電車で片道40分以上は掛かりますし……祖母のケアに支障が出ます」
そこまで考えられる自分は、泣いているくせに案外冷静だとも思う。
──あの、Lunaのカリスマ社長の目に止めてもらった。
もう、それだけで私には十分なご褒美だ。
だからこれ以上の何かを望もうとも思わない。
今の私にできることがあるとするのなら、彼のため、Lunaのために、この誘いを断ることなのだ。
彼が誘って(いざなって)くれたとおり、嘘のない正直な気持ちと言葉で、感謝とともに敬意を示すべきだろう。