新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
突然、何かを考え込むみたいに、顎に長い指を添えて話す如月さん。
思いもよらない彼の返答に目を丸くして固まると、次の瞬間、彼は閃いたように表情を明るくした。
「それならまずは、お祖母様の容態が落ち着くまで企画部に所属したらどうかな」
「き、企画部……?」
「そう。企画部は、デザイン部と密に連携しながら、季節やイベント毎にLunaのジュエリーの売りを作っていく、Lunaの心臓的な部署だ」
Lunaのジュエリーや社風、ポリシーについても、詳しく知ってもらえる場所でもある……と、続けた如月さんは、素敵なイタズラを思いついた子供のように瞳を輝かせながら話を続ける。
「いつかデザイナーにステップアップすることを考えても、良い勉強ができる場所だ。クリエイティブな部署ではあるけど、残業はない。そもそも、決められた時間内でベストを尽くすのが大事だ……というのが俺の考え方だし、やっぱりオンとオフは明確にしたほうが良いものを作れるだろう?」
──残業はない。
それなら、仕事が終わってからこれまで通り、おばあちゃんの病院に顔を出せるということだ。
でも……先程も言ったとおり、Lunaの本社と、今、おばあちゃんが入院している病院は距離がある。
「とりあえず、まずはお祖母様の今の主治医と相談して、可能なら紹介状を書いてもらうことが先決だな。それで、うちの本社の近くにある一番設備の整っている病院への転院が可能か考えよう」
けれど、そんな私の不安を見透かしたかのように、如月さんは話を続けた。
「もちろん俺も、お祖母様の病状を詳しく知ってから、知り合いの腕の良い医師に聞いてみるよ。あ、君はすぐにでも、現在勤めている会社に辞表を提出して……って思ったけど。もう面倒くさいし、どうせ系列企業だから、そこくらいは職権乱用しようかな?」
「え……と……」
「今の君の話を聞いて、回りくどいことしてる時間も勿体無いくらい、すぐにでも君が欲しくなった。まぁ、元々欲しくて、たまらなかったんだけど……」