新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「結局、お菓子も残ったままにしてきたから、明日課長に見つかったら小言を言われそう……」
今の会社は中小企業ではあるものの、それなりに安定した企業といえる。
それというのも系列の親会社がブライダル業界、最大手の企業だからだ。
十数年前に買収されて以来、子会社のひとつとして頑張っているらしい。
おばあちゃんの入院している病院へも通いやすく、有給制度も充実していて、福利厚生もしっかりした会社。
だから、やり甲斐がどうのこうのよりも、今の会社に勤めていられることは幸運だと思っているし、恵まれているとさえ思う。
三日に一度嫌味を言ってくる上司や、何度注意しても仕事中の私語が治らない後輩。
愚痴ばかりを零す営業さんもいるけれど……そんなことも全部、我慢できた。
「ふふっ。でも、せっかく課長さんが買ってきてくれたお土産だもの。全部食べてあげなきゃ、課長さんが報われないわ」
「……だよねぇ」
「ええ。それで今度こそ、美味しいお土産を買ってきてもらえるように期待しましょう。きっと、それが円満への近道よ」
言い終えてクスクスとおばあちゃんが面白そうに笑うから、私までつられて笑ってしまった。
──窓の外では陽が落ちようとしている。
これが私の日常だ。
一番大切な人と過ごす、一番大切な時間で、何よりも優先すべきこと。
おばあちゃんの笑顔を守るためなら、なんだってしてみせると、五年前に心に誓った。
おばあちゃんの最善が私の最善であり、おばあちゃんと生きていくためならもう、何を捨てても構わないとさえ思うのだ。