新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「実は最初から、このつもりだったんだ。桜が承諾してくれたら今日はこのホテルに泊まって、婚姻届は明日提出しようと思ってた」
「あ、あの、私……」
そっと髪を耳にかけ、ゆるく震える息を吐く。
最初からこのつもりだったということは……如月さんは今日、最初から私とこのホテルに泊まるつもりだったということだ。
それってつまり……そういうこと、だよね?
私は今夜、如月さんとこの場所で、初めて……。
彼と結婚する以上、いつかこういう日がくると覚悟はしていたものの、あまりに突然で、心の準備ができていない。
そもそも私たちは結婚すると決めたものの、まだ、キスすらしたこともなかった。
やっぱりこんなの、絶対におかしい。順序が違う。
そう思うのに、彼に見つめられると、この結婚に対しての否定的な思いは鳴りを潜めて、彼に身を委ねたくもなる。
「降りようか」
品の良いベルの音と共に止まったエレベーターは、目的の階に到着したことを知らせていた。
彼にエスコートされながら、私は彼が用意してくれていた部屋の扉の前に立つ。
スタイリッシュなのにラグジュアリー感溢れる扉には、英文で書かれたホテル名と『Suite』の文字が光っていた。
もしかして、もしかしなくともここは……このホテルの、スイートルームということだろうか。
「え……あ、あの、まさかここに……」
緊張と戸惑いのピークを迎えた私は、思わず背の高い如月さんを見上げた。
けれど慣れた様子で扉を開いた彼は、ごく自然な立ち振舞いで、私を部屋の中へと誘って(いざなって)いく。