新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
 

「……まるで、ジュエリーボックスみたいだよな」


耳元で甘く囁かれた言葉にハッとして振り向くと、背後に立つ如月さんと目が合った。

柔らかな笑みを携えた彼は私が触れているガラスに手を置いて、私を囲うように腕の中に閉じ込める。


「わ……私も今、同じことを考えていました……」


慌てて如月さんから目を逸らした私は、ガラスに添えていた手を首元の桜のチャームへと引っ込めた。

心臓は、今にも爆発してしまいそうなほど高鳴っている。

それが初めてのスイートルームという場所への緊張なのか、綺麗すぎる如月さんに対してなのかは、もう自分でもよくわからない。

更には、これから起きる彼との何かを考えたら──貧血を起こして、この場で倒れてしまいそうだ。


「でも、これが全部本物の宝石だったら、私はどれだけデザイン画を描いても間に合わないですね……」


必死に平静を装って、苦笑いを零していた。

こんなに素敵で特別な場所に来ても、如月さんは平然としている。

やっぱり彼は、住む世界の違う人なのだ。

そんな彼がどうして私と結婚しようと思ったのか……冷静になればなるほど私は答えにたどり着けなくなって、ほんの少し、寂しさも覚えてしまう。


「……確かに、これだけの宝石を全部ジュエリーにするとなったら、桜は仕事漬けになるだろうな」


面白そうに喉を鳴らした如月さんは、不意に窓ガラスから手を離した。


「でも、そこまで桜が仕事漬けになったら、俺が耐えられない。ようやく手に入れたのに……桜を独占するジュエリーを、嫌いになってしまうかも」

「え……?」

 
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