新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「これ、は……」
手のひらに収まるサイズの小さな箱だ。
箱の蓋の部分には金色の糸で、『Luna』のロゴが刺繍されている。
Lunaでも最上級の、ハイジュエリーを収めたケースに使われる装飾だった。
私のような一般人では、とても手が出ない、高級ラインの限定ジュエリー。
「どうしても婚姻届を提出する前に、桜に渡したかったんだ」
そっと開かれた箱の中には、眩い光を纏ったシルバーのリングが入っていた。
リングの真ん中には、大きなダイヤモンドが光を反射して輝いていて、思わず言葉を失ってしまう。
「本当は、もっと早くにするべきだったのに……遅くなって、ごめん。今日までたくさん戸惑わせてしまってたと思うけど、これまで伝えてきたとおり、桜を幸せにするという気持ちに嘘はない。だから……桜。どうか俺と、結婚してくれないか?」
再び紡がれた言葉に、ようやく事態を理解した私の目からは涙が零れた。
まさか今日……彼から改めてプロポーズされるだなんて、思ってもみなかった。
「初めて会ったときのプロポーズは、まるで仕事の話のついでみたいな形になってしまったから……」
真っ直ぐに、私を見上げる如月さんの目は直向きで、いつだって嘘がない。
私は、彼との結婚が自分の最善だと思ったから彼からの申し出に頷いた。
おばあちゃんのことと、自分の夢。
彼と一緒になれば、そのどちらも守ることができると思ったから、彼との結婚を決意した。
だけど今……気がついた。
いつだって真っ直ぐに私を見て、優しく包み込んでくれる彼だからこそ、結婚したいと思えるのだ。
出会ってまだ数週間、お互いに知らないことばかりだけれど、触れ合う温もりは嘘を吐かない。
彼の言葉と、彼自身を信じよう。
そしてこれから彼と二人で歩んでいきたいと、この三週間で何度も思った。