新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「……桜?」
「……はい。どうぞよろしくお願いします」
私はネックレスの桜のチャームの前で握り締めていた拳を解いて、彼の前へと差し出した。
涙を拭うこともせずに微笑めば、如月さんがどこか安心したように表情を和ませる。
「……よかった。今更こんなことをしたら呆れられて、フラレるかも……とか思ってたから、安心した」
いつも余裕たっぷりな彼の言葉とは思えなくて、私は思わず目を見開いた。
エレベーターの中で一瞬様子がおかしく見えたのは、彼がプロポーズに対して緊張していたからなのかもしれない。
「……桜、愛してる」
甘く囁かれた言葉とともに、私の左手薬指にエンゲージリングがはめられた。
ゆっくりと立ち上がった彼は私の手をそっと掴むと、自身の腕の中に私の身体を引き寄せる。
「これでやっと、堂々と桜を俺のものだって触れ回れるな」
「あ……あの……っ」
突然のことに驚き戸惑っていると、イジワルに笑った彼の唇が、耳元に寄せられた。
「ひゃ……っ」
ふっと甘い息を吐かれて、必然的に身体が強ばり、鼓動が跳ねる。