夏恋(ナツコイ)!

駅に着いてホテルまでの道のりを歩きながら、

「夏季ちゃんはさ、夏によく海に行くの?」

「海は、中学の頃にコウ……」

言いかけて、口をつぐんだ。

『浩平と行ったきり』そう言おうとして、禁止ワードなんだっけと思う。

海に一緒に遊びに行った時は、水着をからかわれたりして、けどあいつだって変な柄の水着で……

思い出し笑いをすると、

「…うん? どうかした?」

と、雅和さんに訊かれた。

「いえ、なんでもー」

笑ってごまかすのに、

「だけど、夏季ちゃんの水着姿って、すごくかわいいんだろうね」

そんな風にも話されて、

「いや私なんて全然! だって浩平には笑われたし……」

喋って、慌てて口を押さえる。

「……また、浩平か……」

雅和さんが明からさまに不機嫌になったのがわかって、

「……ごめんなさい」

思わず謝ると、

「謝らなくてもいいけどさ、」

そう言って、

「俺だってプライドがあるし、一応傷つくから…ね」

不意にあごをくいと持ち上げられた。



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