龍使いの歌姫 ~神龍の章~
赤い髪の赤子
「………セレーナ……様?」

レインは目の前の女性を見ながら、呆然と呟いた。

セレーナがここに来たことにも驚いたが、それ以前にセレーナの顔に驚いた。

彼女の顔は、どことなく自分と似ているのだ。

もしも、髪の色が赤だったら、もっと良く似ていただろう。

「あ、あはっ!あははは!やっぱり貴女だったのね」

セレーナは嬉しそうに笑い出すと、そのままレインを抱き締める。

「貴女の名前は?」

「………レインと申します」

抱き締められて、レインは混乱した。

王族と言うものは、もっと威厳がありそうな感じだったのだが、セレーナはまるで、無邪気な子供だ。

「レインね!あー、やっぱり貴女だったのね!」

「……あの?」

「私ね、ずっと何かを探していたの!それがようやく見付かったのよ!」

バッとレインから離れると、今度はレインの両頬を包む。

「貴女の顔、私と良く似てるわね。やっぱり貴女は私が探していたものなの!私ね、さっきまで貴女は、赤い髪を持って生まれた可哀想な子だとしか思ってなかったのよ?」

けれども、その考えはレインの顔を見てから変わった。

「私、いつからか大切なものを無くしてしまったの。でも、貴女を見て思った。見付けたわって!貴女は私のなの!」

意味が全く分からない。

一国の王女が、何故そこまで自分を歓迎しているのだろうか?

「ねぇ?貴女の両親は?」

「……おりません。姉しか」

姉という言葉を聞いた途端、セレーナの顔がパッと明るくなる。

「ねぇねぇ?それってもしかして、ティアニカのこと?」

「……は、はい」

ティアナの話題が出るとは思わなかったので、レインは驚きながらも頷く。

「やっぱりそうなの!知ってる?ティアニカってね、十年前に王族の宝を盗んで消えたの。でもね、そのもっと前に、赤ん坊を拐ってどこかにやったって噂を聞いたわ」

「………」

「私のお母様と叔父様は双子の兄妹なんだけどね、お爺様が実験のために二人を交わらせて、子供を生ませたのよ。生まれた子は赤い髪で生まれたらしいわ」

レインはただ、黙って話を聞くことしか出来なかった。

「赤い髪の子供は不吉だから、殺せと命じられたの。でもね、ティアニカと……ああ、もう一人いたわ。幻惑の魔法使いがそれに異を唱えたのよ」

幻惑の魔法使いという言葉に疑問を持ちながらも、黙って先を促す。

「そして、暫くしてその子は城からいなくなったそうよ?でも、探しだしてまで殺す必要はないと思ったみたいね。結局その子はどうなったのかは分からなかったわ。一応表向きは死んだことになってるけど」
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