龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「……いじめてない」

「うん。アルにいじめられた訳じゃないよ。ただ、ちびって言われてちょっと落ち込んだだけで」

『やっぱりいじめたのー!!レインはちっちゃいけど、ちびって言っちゃ駄目なの!ちみっちゃいだけなの!』

フォローのつもりで言っているのだろう。ティアは目をキラキラと輝かせている。

大きくなっても可愛らしさは変わらないらしい。

「………」

だが、レインに確実にトドメを刺した。

ガクッと膝を付き、どよーんとまた落ち込むレインに、良く分かっていないティアは首を傾げる。

「お前、ゼイルと一緒じゃ無かったのか?」

『ゼイル、おじじ様に呼ばれたの!』

ティアの言う「おじじ様」とは、長老のことである。

何故なら、長老がティアのことを孫の如く可愛がっていて、自分のことを「おじじ様」と呼ばせたからだ。

「しかし、お前がまさか、ゼイルにそこまでなつくとはな」

ゼイルもティアを妹のように可愛がっていて、まるで本当の兄妹のようだ。

『ゼイル、ティアと沢山遊んでくれるから好きなの!』

「仲良くしてくれて、私も本当に嬉しいよ」

「復活したな」

どうやら、落ち込みタイムは終わったらしい。

切り替えが早くて助かると、アルは心の中で安堵した。

『レイン元気になったのー?』

「うん!」

『良かったの!』

ティアは体は成長したとはいえ、まだ心は幼いらしく、言動も子供っぽい。

それでも、レインの育てたティアは、優しい子だった。

他に怪我をした龍がいたら飛んでいって、傷の心配をしたり、ティアより小さい龍と遊んだりもする。

それが、レインには嬉しかった。
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