オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき


「高卒だからCコースではあるけど、管理者側になれる才能を上に買われて、Eコースへの切り替え試験受けないかって誘われてるほどの人材だ。興味あるだろ?」

すがるような眼差しを向けられて悩む。

たしかに、調合の仕事内容に精通している人間と話せるのはでかい。でも、女目当てに来ているそいつが、飲みの場で俺と仕事の話をするとも思えなかった。

そもそも、社外の人間がいる席で話せる内容じゃ得られるものは少ない。

北岡には悪いけれど、顔だけ出してすぐに帰らせてもらうことにする。
そして、それを口にしようとしたとき。

「第二品管の加賀谷さんっていうんだけど。おまえも名前くらい聞いたことあるだろ? いやー、苦労したんだからな。最初は断られたけど、粘って粘ってようやく約束取り付けたんだから俺に感謝しろよなぁ」

北岡が告げた名前に耳を疑う。
人通りが多く、ざわざわとうるさい西口前。

「は?」と聞き返すと、北岡は「だから、第二品管の加賀谷さん」と再度、その名前を口にする。

「加賀谷……」

それは間違いなく、友里ちゃんから何度も聞いた名前だった。

「行く」とはっきりと言い、早足で歩きだした俺に、北岡は安心したように笑い隣に並んだ。





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