オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき



オーダーを済ませてから「どうも。松浦です」と挨拶すると、女の子たちは心なしか頬を赤くし笑顔を見せる。

せめて酒が運ばれてくるまでは愛想をよくしておこうと決め、それぞれの自己紹介に微笑んでうなずく。

受付嬢をしているという三人は、そこそこ可愛いんだろう。北岡が目尻を下げっぱなしにしているのを見てそう判断する。
こいつは案外面食いだから。

三人は、髪型にも服にもトレンドを取り入れていて、雑誌や情報番組でいうところの〝オシャレ女子〟に当てはまるんだろうし、きっとこの飲み会は〝あたり〟だ。

北岡もそう思っているのが浮かれた表情から見て取れる。

……加賀谷さんも、心のなかじゃそんなことを思っているんだろうか。
チラリと視線を向けると、加賀谷さんは切れ長の目を細めて、女子の話に耳を傾けていた。

『強面なんですけど、性格は全然そんなことなくて面倒見もいいし優しいし、よく笑うんです』

一緒に飲んだとき、どこがそんなに好きなんだと聞いた返事がそれだった。

友里ちゃん本人は、感情を抑えて答えたつもりだろうけれど、無意識なのか口角は上がりっぱなしで、愛しさみたいなものがこぼれていた。

あの友里ちゃんがはにかんでいる、と内心衝撃を受けた。
俺にはつんけんしてばかりなのに、加賀谷さんのことを話しているときにはこんな顔をするのか、と正直驚いたことを鮮明に覚えている。





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