オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき


「あれー、加賀谷さんってよく見ると瞳が薄茶なんですね」
「ああ、何代も上にアメリカだかどっかの国の血が混じってるらしいから、そのせいかも。
でも、よく気付いたな。俺、自分で見てもどのへんが薄茶なのかわからないのに」

「えー、わかりますよ。あ、でも女性のほうが色は細かく判断できるって言うし、そのせいかも。ちなみに私の瞳は何色に見えます?」

自分の目を指さして笑いかける女の子の顔を、加賀谷さんは「わかるかなぁ」と困ったように笑いながら、覗き込む。

その光景は、こういった飲み会ではごく普通に繰り広げられるもので、目にする機会だって多いのに、なんとなく胸くそ悪く感じ目を逸らした。

……でも。そうだよな。
俺が勝手に想像していただけであって、加賀谷さんだって普通の男だ。こういう飲み会に参加だってするし、女の子を口説いてその場の雰囲気で持ち帰ったりもするんだろう。

いたって普通のことだ。自分だって何度も繰り返してきた、普通のこと。

――なのに。
なんでこんなに気に入らないんだろう。

腹の底から湧き上がってくるわけのわからない苛立ちをどうにか逃がしたくてため息をつくと、〝智夏ちゃん〟が、心配そうに「あの……」と話しかけてくる。

視線だけ移すと、つけまつ毛とキラキラしたアイシャドウで彩られた目が俺を見上げていた。

栗色の髪が、友里ちゃんを思い出させる。
面倒だと思いながらも「ん?」と笑みを作ると〝智夏ちゃん〟の頬が赤く染まる。



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