オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「あの、体調が悪そうなので、大丈夫かなって」
「ああ、ごめんね。少し仕事で疲れてるだけ」
「そうなんですか……。ごめんなさい。もしかしたら、私たちが松浦さんに会いたいなんてワガママ言ったせいで、無理やり連れてこられちゃった感じですか?」
潤んだ目で〝そんなことないよ〟待ちの問いかけをされ、でも、そう答える気にもならずに曖昧に笑って誤魔化す。
そうしている間にビールが運ばれてきて、北岡が「じゃあ、とりあえず乾杯でもするか」と言いだす。
「お疲れ様ー、かんぱーい」
寄せられた六杯の中ジョッキを眺めながら、友里ちゃんは最初の一杯でさえ、カクテルを頼んでいたっけと思い出す。
あんなにキリッとした綺麗な顔立ちをしているのに、彼女は甘党だ。ビールは苦くて口に合わないらしい。
でも、アルコール自体が嫌いなわけではなく、甘めのカクテルならおいしく飲めるらしいから、次回はそういう店に誘ってみてもいいかもしれない。
この間も、キウイサワーをおいしいと飲んでいたし。
「私、ビールって苦手なんです」
そう話し出した〝智夏ちゃん〟に、北岡が「そうなの?」と眉を下げる。
「最初に言ってくれればよかったのに」
「だって、飲み会って、みんなとりあえずビールって感じじゃないですか。苦手だとか言いだしにくくて」
「じゃあ、智夏ちゃんの分のビールは俺が飲むから、違うの頼みなよ」