オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき


「難攻不落に見えて案外そうでもないっていうか。真面目だからこそ、他人の好意を無視できない。女関係の噂最低な俺なんかでもちゃんと相手をしてくれて、そういうところ可愛くないですか?」

少しは友里ちゃんのことを考えればいい。

こんな飲み会に加賀谷さんが出席したなんて聞いたら悲しむに決まっているあの子のことを。

それなのに、悲しい気持ちなんて全部隠して加賀谷さんの前では平気な振りして笑うあの子のことを。

俺と友里ちゃんに繋がりがあるとは知らなかった様子の加賀谷さんは、驚いたままなにも言わなかった。

とりあえずこれで、加賀谷さんの頭のなかには友里ちゃんのことが思い出されただろうと満足して、にこっと笑顔を作った。

「俺、用事があるんで、お先に失礼しますね」

北岡には悪いけれど、これ以上、ここにいる気にはなれない。

周りの返事も待たずに五千円札を一枚テーブルに置き、席を立った。









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