オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「いえ。清々しいくらいにハッキリ言うので少しおかしくなっただけです。本当、松浦さんの言う通り、自分自身でも面倒くさいと思います」
自分でも思っていたことだけど、こうして他人からズバッと言われるとなんだか気持ちがよかった。
下手に〝でも仕方ないよ。それが恋愛感情だもん〟なんて慰められるよりもよっぽどスッキリする。
さっきまではドロドロして、まるで雷が鳴る直前の空みたいな色をしていた心。そこに、わずかな晴れ間が覗いたみたいだった。
「いただきます」と手を合わせてからサラダを食べ始めると、次々と料理が運ばれてくる。
松浦さんが頼んでくれたのは、出し巻き卵と梅シソの豚バラ巻き、それに牛肉のたたきと、お刺身の盛り合わせ。
豪華なメニューに驚いていると、「元気がないときはおいしい物食べるのが一番だから」と、取り分けた料理を渡される。
さっきから当たり前のように料理を取り分けてくれている様子に、結構マメなひとなのかなと思う。
もっとも、今は一応私をターゲットにしているらしいから、そのためのポイント稼ぎかもしれないけれど。
「あ、おいしいですね。これ。梅の……」
「梅シソの豚バラ巻き。俺も好きで、ここ来ると必ず頼むんだよ」
話しながら、松浦さんがパクリとひと口で豚バラ巻きを食べる。
「なかにチーズも入ってるんですね」
「隠し味程度にしか入ってないのによく気付いたね。使ってるのが豚バラで油が出るから、チーズをあんまり多く使うとしつこくなるんだろうけど、バランスがいいよね」
またひとつ、豚バラ巻きが松浦さんの口のなかへと消えていく。
男性らしくしっかりと食べる姿を前にしていると釣られてなのか私までお腹が空いてくるから、負けじと箸を進める。
さっきまではムカムカしていて、とてもじゃないけどおいしくご飯を食べられる状態ではなかったのに、今は食欲が湧いてくるのだから不思議だ。