不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
『魔法具を持っているの。エルマは魔法士?』

『残念ですが、そういった才能は欠片もありません。こちらにお仕えするのが決まりましたときに、父がこれを買い与えてくれたのです。町で売買されている魔法具は非常に高価なので、いきなり購入してしまった父は破産を覚悟したそうですよ』

 エルマは笑って話してくれたが、父親への感謝が痛いほど伝わってきた。

 力に目覚めた市井の者や、魔法力を持つ血筋でありながら、なにかの理由で家から切り離された者は、流れの魔法士となる。

 魔法具の売買で裕福な生活が保障されるので、少しでも力の片鱗があれば、皆こぞって魔法士を目指すのだそうだ。

 ただ、小さなころに才能があっても、大抵は、成長する段階で消えてしまうらしい。

『お父さん……お父様は、いまどうしていらっしゃるの』

 侍女頭のデイジーに言われて、言葉使いも貴婦人に倣うようにしている。

『元気です。ジリアン様が、魔法具は必要だからと言われて、買い取ったのちに支給という形にしてくださいました。ですから破産も回避できています』
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