不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ジリアンの魔法具に頼るしかなかったまゆこは唇を噛んだ。

 まゆこの肩を支えたエルマが、強調しながら言う。

「マユコ様はジリアン様が〈初めて〉〈強く望まれて〉この城に呼ばれた方です。そのお方に向かって、そのような言いざまは許されません!」

「おだまり! ジリアンにふさわしいのはこのわたし。フォンダンの姫であり、歴代きっての女魔法士カーライルです!」

 女性は男性よりも、血筋によって伝わる魔法力が小さくなる。そのせいか、女の魔法士はほとんどいないらしい。

 それでも、フォンダンの者なら、そのあたりの魔法士では太刀打ちできない女魔法士となれる。

 カーライルのもう一方の手――右手が、左と同じようにゆっくり上がってくる。

 二発目を撃つ気だ。エルマが身構える。

 ――指輪は、もうもたないかもしれない。

 まゆこも左手を構えた。
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