不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 どうやら、カーライルは表裏を使い分ける人のようだ。

 ジリアンに対してはひたすら弱々しく訴える。

「やめて、ジリアン。今度こそ力を封じられて他国へ嫁がされてしまうわ。わたしは、あなたが初めて近くに寄せた姫がどういう人かを確かめたかっただけなの。だってわたしは小さなころからずっと……」

「私に近づく女性たちを、おまえが悉く蹴散らしてきたのは知っている。大目に見てきたのは、フォンダンの姫であるのと、私もそれで助かってきたからだ」

 ――え? そうなの? ……とまゆこはまた驚いた。

 怜悧で寡黙でも、女嫌いという感じはしなかった。違うのだろうか。

「だがもう、それも終わりだ。マユコにかすり傷でも負わせたら絶対に許さない。家同士の争いになっても構わない。報復を覚悟しておけ」

 カーライルは驚愕の眼でジリアンを見た。わなわなと震える両手で口元を抑える。さらに大量の涙が頬を伝わった。

 まゆこは頬を真っ赤に染め上げた。

 ――え? え? ジリアンとわたしって、そういう関係ではないよね。すごく誤解されそうだけど、それでいいの? ジリアン。

 大切な客だとは言われていた。しかし、客だ。帰る者なのだ。
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