不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ジリアンが教えてくれる。

「樹木の守護があるかもしれないというだけだ。多大な魔法力があれば誰でも感じるだろうが、分からない者の方が多い」

「そ、そう。……良かった」

 ほっとする様子が可笑しいのか、ゲオルグはさらに笑いを深くする。

「可愛いなマユコ。仕草といい、動きといい、小動物のようだ。王城に来る令嬢たちとは大違いだな。ジリアン、どこで見つけてきたんだ?」

「言う気はないから聞くな。私の大事な客だ」

「大事な……か。客なら、マユコさえよければ俺が誘ってもいいってことだな」

「だめだ。マユコには構うな。闘技どころか、まともにぶつかることになるぞ」

 まゆこをずっと見つめていたゲオルグは、そこでようやくジリアンへ目を向けて凝視した。そして呟く。

「おまえ、そこまで……。驚いたな」

 ジリアンとまゆこを交互に見て思うところがあったのか、ゲオルグは退散することにしたようだ。片手を上げてこの場から去ろうとする。

「マユコ。俺は女に避けられたことがない。新鮮だったぞ。また遊んでくれ。じゃ、晩餐でな」

 背を向けたあとは大股で歩き去ってゆく。彼もまた、現れたときと違って、三家の決まりに従うつもりだ。

 それなら最初からそうすればよかったのに、と思ってしまう。

 まゆこに見せつけるつもりとか、印象を強くしたいからとか。どこへ行っても、人がいれば難しい人間関係が生まれると思うとがっくりくる。
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