不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「私たちも戻ろう」

 ジリアンはまゆこに腕を差し出す。つまりは組めということだ。

 せっかく落ち着いたまゆこの頬が、再び上気する。どうしようか迷ったが、彼女はその腕に手を掛けた。

 歩き出す前に彼を見上げて言う。

「ね、ジリアン。あなたさえ許してくれるなら、今夜の晩餐の席に着きたい」

「いいのか? カーラやゲオルグは押しが強い。私は慣れているが、マユコには面倒だろう?」

 面倒というより、気後れしたり、押され気味の会話を繰り返したり、避けたい理由はたくさんある。

 しかし、それでは情けない。異世界まで来ていながら、同じように情けないと思えることを繰り返したくはなかった。

「面倒事を避けてばかりいたらつまらないでしょう? わたしがこちらへ来たことに意味があったとしても、隠れるばかりでは分からないと思うの」

「……そうだな」

 ジリアンは迷いがちに応じた。

 腕を掛けた状態で振り返ったまゆこは、エルマとテオを見やる。

「ね、そう思うでしょう?」

「はい。マユコ様、どうぞ気張って晩餐へお望みください」

 まゆこは苦笑したが言いたいことは分かる。でくの坊と言われては、逃げるわけにはいかない。
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