不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 歩くために裳裾を摘んでいる手で、思わず布ごと握り締めた。

 確かに気張っている。

 テオも言う。

「マユコ様は晩餐にご出席されると、ルース様に伝えておきます」

 彼も嬉しそうだ。テオはお辞儀をしてから、ルースに報告するために走り出した。

 まゆことジリアンは腕を組んで歩き出す。

 ちらりとエルマを見れば、彼女はテオの後姿をじっと目で追っている。

 まゆこの視線に気づいたエルマは、軽く腰を屈めてから、少し離れた位置に着いて一緒に歩き始めた。

 顔を伏せ気味にしているので表情が分からない。

 ……? テオを気にするのは、姉のような気持ちになるからかしら。

 奇妙な間だった。
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