不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「マユコ様。宝石はどういったものに致しましょうか」

「デイジーさんが選んでください」

 思わず〈さん〉づけになってしまう。

 恰幅のいい年配の侍女頭デイジーに睨まれて、まゆこは急いで言い直す。

「デイジーの思う通りでいいわ」

「かしこまりました」

 デイジーはまゆこに向かってにこりと笑った。体中から醸し出す迫力が、笑うと少し収まって優しい感じになるのはジリアンと同じだ。

 彼女は後ろに待機していた侍女たちに指示を出す。

「〈海の贈り物〉をお持ちして」

 他に〈太陽の微笑み〉セットとか、〈静かなる大地〉セットなどがある。

 今夜のドレスは薄い水色が主体だったから、宝石類は深い青色を基調としたものにして引き締めるつもりだろう。

 髪も結い上げられている。これで多少は大人っぽい感じになるはずだ。

 指示に従って動き出した者を見たデイジーは、珍しく慌てた様子で付け加える。

「エルマ。あなたは待機していて。他の者が持ってきなさい」

 宝石は、底の面にビロードが張られている浅い箱に並べられたものを侍女がまゆこの前に持ってくる。
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