不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 以前エルマがその箱を持ってくるときに、急いでいたのか、箱が傾いて宝石類がざらざらと落ちてしまいそうになった。

 片手で箱を持ち、片手でぱぱぱと受け止めたのは見事だったが、握ったときに力を入れ過ぎたのか、ピンが曲がってしまったのだ。

 そのとき以来、デイジーはエルマに宝石類を運ばせない。

 これはデイジーの領分における判断なので、まゆこにはなにも言えなかった。

 エルマがしょげた感じになったのを見たまゆこは、あとでお菓子を一緒に食べた。良い思い出になっている。

 運ばれた青い宝石類を、あちらこちらに付けられる。相変わらず重い。

「マユコ様。出来上がりましてございます。どうぞ、お確かめください」

 まゆこは、大きな姿見に映る自分を眺めて呟く。

「海の底にいる人みたいね。別人のよう――」

「自信をお持ちになられませ。今夜は、ジリアン様の瞳の色と対でございます」

< 131 / 360 >

この作品をシェア

pagetop