不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 鏡に映っていたデイジーに笑って返したところで、タイミングよくジリアンが迎えに来た。

「ありがとう。じゃ、行ってくるわね」

「行ってらっしゃいませ」

 晩餐の間へ行くだけなのに、今宵はデイジーをはじめとした侍女たちが総並びで頭を下げて見送ってくれる。皆、気合が入っていた。

 ジリアンと腕を組んだまゆこもまた、気を張って晩餐の間へ向かう。

「マユコ」

「はいっ」

「美しいな」

「ふぇっ」

 驚いて彼を見つめても、淡々としたものだったので冗談かと思った。もっとも、ジリアンの冗談など初めてだったから、なにか聞き間違えたのかもしれない。

 晩餐の間の前室でカーライルとゲオルグが来るのを待った。

 まゆこたちと同じように腕を組んだ二人と一緒に、いつもよりも華美に飾られた晩餐の間に入り、テーブルにつく。

 そして晩餐が始まる。
< 132 / 360 >

この作品をシェア

pagetop