不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 まゆこの中で極限まで高まった緊張感とは裏腹に、晩餐は滞りなく進んだ。

 ジリアンがテーブルの端に座り、角を挟んだ右側にカーライル、左側にゲオルグの席が用意されている。

 ゲオルグの隣にまゆこ、カーライルの隣がルースといった席順だった。

 身分にそった順ということだ。もしもジリアンに奥方がいれば、また違った席順になっただろう。

 カーライルはひ弱な美女という筋書き通りの態度を崩さなかった。ジリアンがいるからだ。

 彼女はジリアンの方ばかりを見て話し、ゲオルグはまゆこの方ばかりを見て話す。

 ときおりジリアンが割って入って助けてくれるが、ゲオルグの押しの強さはまゆこをかなり引かせた。

 後追いでカーライルも会話に入るが、弱々しさをかなぐり捨てるほどにはならず、表面だけを見ればとても平穏だ。

 ルースは一人で黙々と食事をしている。彼はカーライルの隣に着席していたが、彼女にとって、子爵にしかなれないリンガル家は視野にも入らないようだった。
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