不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 夜半になって晩餐は終了した。ゲオルグたちが帰るのを見送るために、主棟の玄関へ連れだって行く。

 正面玄関の前広場には、四頭立ての馬車が待っている。

 最外壁までが城内。

 城壁の外には城を中心とした町が広がるが、幾本もある街道は町の端まで行くとそれぞれ関が設けられている。そこまでがバーンベルグ家の領内となる。

 そしてそこから視界に入らないほど遠くまで広がっているのが、領地だった。

 他家の者は、城内では魔法を使ってはならないという決まりがあるので、城から外へ向かうために馬車を使う。

 馬車で城外へ出れば、それぞれの家から迎えが来ているそうだ。

 用意が整った馬車を眺めながら、玄関から出たところの広いたたきで挨拶になる。

 カーライルはジリアンに巻き付くようにして傍に立った。そしておねだりだ。

「泊まっていってはいけないかしら。ね、ジリアン。久しぶりに夜明けまで飲みましょうよ。ねぇ、マユコもどう? いろいろ話さない? 女同士、話題は尽きないでしょうし」

 まゆこは、笑って首を横に振るだけにとどめる。

 会話を始めたら、いきなり部屋へ行きたいと言われそうだ。

 ――わたしがバーンベルグ公爵夫人の部屋にいるって……知らないよね。知らないままの方が平和な気がする。
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