不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ジリアンは声の調子を変えて続ける。

「私の都合でこちらへ引っ張ってしまったというのに、待たせてすまないな」

「魔法闘技がもうすぐだものね。いまはそれに集中しないといけないのでしょう? 大丈夫よ。わたしはウィズを楽しんでいるから。あ、そうだ。指輪ね。すごく役に立ったのよ。カーライルの魔法を跳ね返したわ」

 急いで話題を変えた。

 ジリアンが再び歩き出すと、腕を組んでいるまゆこも誘導される。

 来た道をたどってゆく。主棟に戻るつもりだ。

「カーラは当代きっての女魔法士だ。魔女に近いとも言われている」

「魔女?」

「北の障壁を抜けてくる魔物の中でも最強に属する一派だ。カーラが本気だったら指輪は砕けている。私のいまの力で作った物では対抗しきれないからな。あいつは、あれで手加減をしたんだろう」

「彼女のこと、よく分かっているんだ」

 余計なことを言った。すぐさま口を閉じるが、ジリアンは顕著に反応する。

「幼馴染だから、いろいろ分かることが多いというだけだ。きっかけ次第で敵になる。ゲオルグはすでに戦う相手だろう? そういう関係だ」
「ゲオルグは強い?」


「強い。いまの私では太刀打ちできない。あいつもそれを知っている。もしかしたら、バーンベルグ家の呪いのことも、かなり詳細に知っているかもしれないな。だから、マユコを見に来た」

 どきりとする。呪いとはなんだろうかと再び大きく疑問が沸いた。
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