不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「温室があるよね。ジリアンと散歩したときに、遠目で見たの」

「はい。中央の庭から抜けた奥庭のもっとも奥側にあります。ずいぶん遠いのですがよろしいですか?」

「えぇ。部屋にいても皆の邪魔になるだけだもの。なるべく部屋は空けるようにしておかないと」

「マユコ様は、本当にいろいろよくご覧になっていますね」

「そうかな。仕事で毎日細かな変化を追っていたから、癖になっているかもしれないわね。でもね、この癖は人の理解にも役立つのよ。表情が薄いとか、あまり多くをしゃべらないとか、そういう人でも照れることはあるのよね」

 ふっと沈黙が下りた。まゆこは斜め後ろにいるエルマを振り返る。
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