不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 興奮したのかどことなく赤味を帯びたエルマの頬を見て、まゆこは焦った。思わず両手を浮かせて、あてどもなく動かしてしまう。

「誰が誰を好きになってもいいのよ。気持ちに蓋をしても、いつか零れて出てしまうんだから。人の心は誰にも止められないし! 強い気持ちほどそうなってしまうんだものねっ!」

「……マユコ様はそうなのですか?」

「えぇえ……っ……」

 鋭い切り返しが身体を貫いていった。

 まゆこは衝撃でよろよろと膝を崩すと、土の上に座り込んでしまった。俯けば、綺麗に整えられた芝の緑が目に入る。

 エルマは慌てて膝を崩し、まゆこの顔を覗き込む。

「すみません、余計なことを。わたし、慌ててしまいまして。大丈夫ですか」

「……いいの。わたしも迂闊なこと言ったわ。気にしないで。あのね、いまの話、なかったことにしてくれる?」

 顔を上げるとエルマと目が合う。エルマは数回瞬きをしたあと、深く頷く。

「分かりました。いまのは、マユコ様とわたしの胸にしまっておくということに致しましょう。誰にも言いません」

「ありがと。わたしも言わない」

 真剣な面持ちで言葉を交わした。
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