不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 カーライルはまゆこをきつく睨むと、あでやかに微笑んで言う。

「話があるの。来て」

「ジリアンの傍を離れないよう言われているわ」

「だからなに。ここで話したいの?」

 周囲は舞踏会に招待された貴族たちがさざめいている。誰もが聞き耳を立てているのは明白だ。そういうところであからさまなやり取りは避けたい。

 広間から抜けて、廊下を歩き、別棟へ入る直前のホールで二人佇む。

 大広間には暖炉が二十もあるそうだが、ここは一つもなくてうすら寒かった。

 そんなことは構わないとばかりに、カーライルはまゆこに言ってくる。

「婚約なんて、いまだけの方便でしょう?」

「あなたには関係ありません」

「あるわ。わたしはジリアンと結婚して子供を産むつもりよ。彼と私の子なら、どれほどでも魔法の潜在能力は高まる。きっと、史上最高の魔法士になるわ。それをあなたが邪魔するわけ?」
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