不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 魔法の力は遺伝する。だから、カーライルの主張もあながち間違ってはいない。

 しかし、ジリアンには呪いの問題がある。カーライルがジリアンの〈ただ一人〉でなければ、彼は手を伸ばさないだろう。

 ただ、以前まゆこがジリアンに言ったように、幼いころは伴侶として見られなくても、成長したら変わる場合があるのではないかということだ。

 カーライルの言う通り、魔法力においても三家の関係においても、生まれ育ったウィズのことをよく知っているという面からも、まゆこよりカーライルの方がジリアンには相応しい。

 なにより、まゆこはこの世界から離脱することを考えている。

 ジリアンも彼女を元の世界へ戻すつもりだ。いずれ離れる。

 きゅっと胸が痛んだ。けれど、後ろへ引くことはもうしない。顔を上げてカーライルをしっかりと見定めて言う。

「決めるのはジリアンです」

 たじたじと一歩下がったのはカーライルの方だった。彼女は自分の動きに、はっとしたようになり、ぐっと前へ出てくる。

「あなたの気持ちはどうなの。どういうつもりで婚約者を名乗っているの? その立場に相応しいだけの覚悟があるようには見えないわよ、マユコ」
< 237 / 360 >

この作品をシェア

pagetop