不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 婚約者としての立場を考えるなら、もしかしたら将来は王妃、または子供を産めばその子が国王になる。

 ウィズから出る身には答えられずにまゆこは黙ってしまう。するとカーライルはもっと前へ出てまゆこの肩を掴もうとした。

 それを止めたのは、いつの間にか広間からやってきたジリアンだった。

「マユコになにかしたら、私が許さないと言ったな、カーラ」

「分かっているわ。ジリアン。何もしていないでしょう? 友達になりたいだけなの。そうだ、ジリアン、わたしとも踊ってちょうだい。お願い」

 ジリアンの前では大人しく、か弱いカーライルは、涙まで浮かべて彼の腕を取った。

 女性に慣れていないというジリアンは、たぶん女性の涙にとても弱い。カーライルはそれを知っているのだ。
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