不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 もうなにも言うことはないとばかりに、まゆこはドレスの裾を摘み上げて、早足で舞踏会の広間へ戻ってゆく。

 廊下を一つ抜けるだけで大広間だ。

 誰もいないのが奇妙なくらいだった。誰かが人払いでもしているかのようだ。

 まゆこのすぐ後ろにゲオルグ、その後方にルースがいる。

「なぁ、マユコ。俺はおまえの魔法を見てみたいぞ。王城の結界を抜けるんだろう? ずいぶん特殊だそうだな」

 ぎょっとして振り返る。ゲオルグは笑っていた。

 後ろの方にいるルースの顔も強張っている。いつもにこにこと笑顔を絶やさない彼が蒼褪めているのを見ても、ゲオルグが知っているのが不思議でたまらない。

「なにを、言って……」

「マフを届けに来てくれた奴がいてな。見たことを話してくれた。マフは預かっている。取りに来い」

「なんのことなのか、分かりません」

 はっきりと否定してから向き直り、前へ向かって歩く。
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