不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 目を見開く。まゆこは、闘技が終了してから聞こうと考えていた。

 なにがあるか分からないから先に話しておくというのは、まるで別れの挨拶だ。

「いま、なのね」

「闘技自体に危険はあるが、問題はそれだけではない。国王陛下のご容態が悪くて障壁が穴だらけになっている。勝者となって王になることが決定したら、すぐに北へ向かわなくてはならない。闘技のあと、話をしている暇がない」

「闘技のあと? 前はすごく自信がないみたいだったけど、いまは勝つことも視野に入れているのね」

 ジリアンは微笑しただけで、返事はなかった。

 魔法力を三割程度しか発揮できないと言っていたが、いまは全力での戦闘が可能になっているのだろうか。

 ジリアンの力が増しているように感じたのは確かだ。それなら、彼は。

 ――あなたの愛する人を。〈ただ一人〉を見つけたの?

 声にならない。手が震えた。膝の上に置いていたから、ジリアンには見えない位置だ。彼に当てた視線が動かせない。

 ジリアンもまた、強いまなざしで彼女を見つめている。
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